「蓮は本当に料理が巧いな、さすが俺の息子だ!」
「えっへへぇ…」
「お前は将来、中華料理の巨匠になるぞ!父さん鼻が高い!」

「そうだ!中華料理の神様を父さんは知ってるんだ!」
「かみさま?」
「あぁ。父さんの師匠の師匠さ。」
「すっげぇ!!父さん、神様の知り合いなんだぁ!!」
「おうとも、凄いだろ?!」


「師匠を通じて、神様にお前の事を頼んでおこう!お前の事を幸せにしてくれるように、な!」


中華の神様のご利益は満点だぞ!
父さんが保障する……――


――…

「なぁにが、ご利益満点の神様、だよ…」

夢を見た。
結構昔の夢。…10年とか、それぐらい。
まだ母さんが生きていた頃の夢だ。
俺がまだ、料理とか好きだった頃の話。そう、料理は好きだったんだ。
親父がやっていた、「昇竜軒」(今考えてみるとこの屋号なんかダサい)を継ぐ気満々で。

それなりに才能だってあったような気がする。
自分で言うのもアレだけれど。

ラーメンはまだ作れなかったけれど、よく親父に教わって、餃子やら肉まんやら作ったっけ。

母さんは、「蓮の作る料理は世界一美味しい」ってよくほめてくれた。

母さんが妹を妊娠した時なんか、そりゃあうれしくて、妊娠中の母さんによく料理を作って持っていったっけ。
つわりで辛い時期もあっただろうに、母さんは、幼い俺の作った拙い料理を美味しい美味しいって、何度も言って。


「幸せなんて…」


あの頃が一番幸せだった。


俺の人生の頂点は、どうも結構早く来ていたらしい。


母さんは臨月が迫った時に交通事故で死に、もちろん腹の中の赤ん坊も一緒にだめになった。
親父は落ち込んでパチンコばかりするようになり、
店はやってるんだか、やっていないんだか。
せっかくいた常連客の客足も遠のいていって。
借金は増えるだけ増えて、
ある朝起きたら、親父は当座の生活費(たったの10万ぽっちだ。)を残して、蒸発した。

絵に描いた様な転落人生だ。


夢の中から現実にふわりと浮上した後、5分か10分の間に天井をスクリーンにして走馬灯が走りぬけた。

一足早い走馬灯だ。
俺は頬の肉が引きつったように笑うのを感じながら、汚い布団から体を起こした。


今日で最後だ。


枕元に準備した、ホームセンターで買ってきた肥料と薬品とバケツを見る。


ようやくすっきりすると、若干15歳にして年寄りのような事を考えながら、ひとつ伸びをした。
 

 

 

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